卒業生に聞く神大附属

島田敏宏さん

※会社名・役職等は取材当時のものです

グリー株式会社
(創業初期メンバー)
スマートシッター株式会社
代表取締役社長
島田 敏宏さん
2000年 本校卒業(第10期生)
慶應義塾大学総合政策学部卒業
体験を通じて培われた「自主性」と「積極進取」の精神が
挑戦を続ける糧となっている

学校祭での活動が、社会課題に向き合う原体験となった

高校時代、生徒会役員の一員として、数多くの貴重な体験をさせていただきました。特に印象に残っているのは、学校祭で「臓器移植法」に関するパネル展示を行ったこと。その法律は、私が高校2年生だった1997年に施行され、15歳以上であれば本人の意志で臓器提供が可能と定められていました。是非はともかく、「自分たちにも意思表示できる資格がある」という事実が興味深く、リサーチ過程では関連機関や厚生労働省の官僚などさまざまな方にインタビューを敢行。学校祭当日はメディアの取材を受け、後日、地方紙や専門誌に大きく掲載していただきました。高校生でも、自らの頭で必死に考え、アクションを起こしてみると、大人の方たちも真剣に相手をしてくれる。そうした手応えを体感できたのは大きな学びでした。人間の死の定義に触れる法案を題材としたため、学校の公式行事の場で発信することに、先生方の間で少なからず懸念もあったそうです。そのうえで生徒の自主性を重んじる教育方針を貫き、あたたかく見守ってくださったことに、改めて感謝の念を覚えずにはいられません。

その後、大学在学時にグリー株式会社の創業に携わった際、SNSで収益化に成功した企業が少なかった中で、新たな領域に挑戦することへの抵抗感がなかったのも、神大附属で培われた「積極進取」の精神によるところが大きいと感じます。また、現在はグリー株式会社の100%子会社「スマートシッター株式会社」の社長を務め、ネットサービスを通じた保育業界の課題解決を目的としてビジネスを展開しておりますが、元を辿れば、自分たちの意思で社会課題に向き合った学校祭での体験が、全ての出発点だった気がします。

社会人になってからも役立っている学びのアプローチ

島田敏宏さん

生徒会活動など学校生活を謳歌していた一方で、学習面では決して熱心とは言えない生徒でした。特に英語が苦手で、塾に通ってはいたものの、授業についていけない。初期レベルからやり直さねばと思い、神大附属の先生に相談したところ、一冊の薄い基礎的な文法書を薦められました。高校2年と3年の間の春休みに、その文法書をくりかえし解き、英文法の基礎を叩き込みました。すると、それまで散在していた英語の知識が体系的に結びつき、偏差値が一気に20近くもアップしたのです。このとき体得した「決定版となる入門書を一冊決めて、体に染みつくまで繰り返し学ぶ」というスタイルは、社会人になってからも、未知の分野に挑む際の有効なアプローチとして大いに役立っています。

神大附属では、あらゆる学校行事において、生徒が一丸となって懸命に取り組む文化が脈々と受け継がれていますが、受験勉強もその延長上にあった気がします。先生から押し付けられるわけでもなく、クラスメイトと放課後の自習に励んだり、夏休み期間に勉強した量を自慢しあったり。たとえ厳しい受験勉強でも、生徒がお祭り感覚で楽しめる空気があったのは、神大附属が持つ校風のひとつだったのかもしれません。

ITビジネスに携わる者として頼もしく感じる先進的な教育内容

島田敏宏さん

先日、母校の学校祭を訪問した際、プログラミングとロボティクスを融合させたSTEM教育(Science, Technology, Engineering and Mathematics)に、神大附属が着手していることを知りました。情報の授業では、生徒が自らプログラミング言語でロジックを組み立て、実際にロボットを作動させるところまで進んでいるそうです。私が通学していた1990年代から、校内にiMacが設置されていたり、Webサイトを作成する授業があったりと、神大附属のIT環境・教育は極めて先進的なものでしたが、さらなる進化を遂げた姿を目の当たりにし、ITビジネスに携わる者として頼もしさを覚えました。

私がいま、ITを手段に社会課題の解決を生業としているのも、神大附属ならではの環境や、特色ある教育方針のもとで6年間を過ごしたことに起因していると強く感じています。2000年代生まれの世代が社会で活躍する時代には、今はまだ存在しない仕事が続々と生まれる可能性があります。変化の激しい現代社会を柔軟に生き抜いていくためにも、自らの頭で考え、主体的に行動できる力が、今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。